新刊紹介 

ホーム新刊紹介 

呉谷充利『文学する身体 ー谷崎潤一郎と志賀直哉ー』萌書房 2025.5

谷崎潤一郎と志賀直哉が手にし。戦後行方の分からなかった或る《観音像》が見つかる。近年に見る《志賀直哉旧居》の復元から3年後、2011年のことである。この《観音像》をめぐる二人の作家の精神が明るみになる。谷崎の美的想像力に対する志賀の観想という、二つの精神の意味が明らかにされ、これを山崎正和の『不機嫌の時代』を継承する日本近代文学の一展開とし、さらに東西の文明論を交え、敷衍化し、解き明かそうとする。著者は、いわゆる「近代的自我」に日本文化の多元性を再構成し、新たな考察としながら、この著作を閉じている。(2025.6.21記)

呉谷充利『町人都市の誕生ーいきとすい、あるいは知ー』中央公論美術出版、2022年3月

普遍的なロゴスを語る以前に実存的といえる生としての有りように目を向けた著作。この視点から近代を第三階級(商工)のものであるとし、この階級の発祥の地である近世大坂を主題化する。この根本の文明の問題が問われることなく、脱亜入欧を以って始まった政治的近代としての明治に対し、商都大坂町人の世界が自然条件、仏教、経済、文学、芸能、学問の観点から述べられている。本書は言説と生活、公と私の乖離を明治近代に見て、これを超える身体のデモクラシーを言う。p.275(価格3600円+税)
お問い合わせ
ページの先頭へ