第二次大戦中の日本美術について解説する講演会「戦争と美術」(学校法人奈良学園主催)が17日、奈良市の志賀直哉旧居であった。講師に招かれた美術史家の平瀬礼太さんは戦時下の美術の見直しを訴え、参加者は熱心に聴き入った。
平瀬さんは横山大観などの作品を引きながら1930〜40年代の日本美術について解説。「『不毛な時代』や『空白期』と呼ばれていたが、巡回展で380万人以上を動員した例もあり、美術界は戦前最大の盛り上がりを見せた」とし、活発な芸術活動があったことを指摘した。
その上で「当時の作品は戦争と切っても切れないため、戦後の研究者や批評家は言及を避けてきた。戦後70年の節目に作品群を客観的に判断できれば」と語り、芸術的な評価、社会的な背景の分析などに正面から取り組む必要性を強調した。

参加した奈良市の牧草洋一さん(66)は「芸術作品は構図や造形などに目が行きがちだが、制作された時代の空気も反映する。そうした二面性を考えさせられた」と話していた。【日向梓】