白樺サロンの会

トピックス

2023.11.27
りずむ第十二号リポジトリ 公開
2023.11.20
11月23日(月)平瀬礼太氏講座「明治時代:奈良の美術界」開催。いま日本美術界きっての氏の史料収集力を以て、明るみにされた明治奈良の美術世界についてお話を頂きました。とりわけ、ほとんど知られていない奈良美術学校創設に関わる経緯は、ついにその日を見なかったとはいえ、時代的にも、さらには今日に遺された重要なテーマとしてもあるように思われ、感銘深い内容となりました。明治の歴史の隙間を今日に飾る奈良の美術品の断片は、この地に息づいた芸術の生命を見事に見せていました。平瀬先生のご研究に示唆された奈良美術界の復興・樹立を今に願うばかりです・・・
2023.10.27
10月16日(月)三浦敬任氏講座「奈良に受け継がれる仮面と芸能」。先史時代から我が国につづく仮面芸能について、お話をいただきました。大和国(やまとのくに)に猿楽から発展した能狂言の美。その起源とも言える桜井市の纒向遺跡の木製仮面や、天理市の清水風遺跡の人物絵画土器、さらに縄文時代まで遡る鼻曲がり土面など、奈良に遺された仮面芸能の貴重な歴史を解説されました。日本の誇る仮面芸能が大和国(奈良)にはじまっていることは、平安遷都に廃都となったといえ、古代奈良から今日に伝わる重要な文化の証であることは確かです。先生には、この文化の礎をお示しいただきました。ご研究のご発展を切に願います。
2023.10.09
9月18日(月)西尾元伸氏講座「泉鏡花『露宿』とその周辺」開催。本年は、関東大震災から100年、泉鏡花生誕150年を迎えて、被災した泉鏡花が野宿を余儀なくされた体験を記した随筆作品『露宿』についてお話を頂きました。幻想的な作風を以て知られたその作品とはうって変わるリアリズムにおける鏡花のこの体験記を、先生は「その表現は、事務的な記事文ではなく、リアルな風景を観察し、泉鏡花自身の心の動きが描かれています」とされ「『露宿』は、まるでその場に居るような追体験感を感じさせてくれます」と説明されながら、最後に「人の心が起こした人災」の繊細な心からは程遠い人間の弱さにたいする心の強さをも求められて、本講座を結ばれました。
2023.09.08
8月21日(月)吉川仁子氏講座「夏目漱石『夢十夜』を読む」。小品であるこの作品は、明治41年に書かれます。戦後の漱石研究を担ったとされるこの『夢十夜』についてお話しいただきました。吉川先生はこの中で幸福な結末をもつ「第一夜」について、受講者に意見を求められ、この日の講座を進められました。女性の約束する百年後の再会に現れる百合の花が、それを証明するものであったのか、それとも彼の疑いに百合の花になったのか。議論は別れたようですが、「冷たい露の滴る、白い花瓣」への接吻、「たった一つ瞬いていた」暁の星に、主人公は百年を知って、この一夜が閉じられます。曰く言い難い情感の漂うこの作品のご解説は、受講生の胸深く残ったに違いありません。酷暑の折、講座にお運びいただき、厚くお礼申し上げます。
2023.08.15
7.17(月)東浦弘樹氏講座「魅惑の演劇、演劇の魅惑」開催。劇作家であり同時に舞台を演じられる氏の演劇に込めたお考えを語って頂きました。まず、先生は人生における物語の意義について触れられ、その表現の形としての演劇を示されました。今日こうした物語の表現において、大きな役割とその地位を築いている映画と演劇を比較しながら、その長短を示され、映画にない重要な使命として演劇があることを指摘されました。つまり、時間的な制約を持たない映画にたいして、眼前の演目と上演はその日その場の現実にいわば直接しており、自分自身と真に向かい合う貴重な機会を演劇が与えることと現実のリアリティに届く演劇の重要な役割がそこにあることをお話されました。
2023.06.23
6月19日(月)呉谷充利「志賀直哉『ナイルの水の一滴』ー西洋的なもの、日本的なものー」開催。文学者志賀直哉の死生観を表わすこの一文を洋の東西の一文明論としてお話させていただきました。『暗夜行路』の終章に大団円を結ぶ「大山の一夜」、ロダンの美から救世観音のそれへと変わる東洋的な世界への傾倒、戦後鈴木大拙との交わりに見る唯一つの生、こうした東洋の精神世界に対して、古代ギリシアに遡る西洋の知を20世紀近代建築のル・コルビュジエの一作品に見ながら、志賀直哉が最晩年に記した一文「ナイルの水の一滴」の意味を今日の視点から考えてみました。ご多忙の間を熱心にお聴きいただき、お礼申し上げます。
2023.04.23
本年の志賀直哉旧居(白樺サロンの会)講座は、2023年6月19日(月)14時〜15時30分、呉谷充利「ナイルの水の一滴ー西洋的なもの、日本的なもの」から開始します。前年の10時30分〜12時の時間帯から全日程で午後の14時〜15時30分になります(本ホームページ参照)。詳しくは、学校法人奈良学園の志賀直哉旧居講座案内まで!
2023.04.02
2023年1月16日(月)西尾元伸氏講座「泉鏡花『薺』・『蝶々の目』とその叙述について」  作品(大正10)は、「斜向ひ」の少女《みんみい》を可愛がる「我児のない」夫婦の姿を描き、《圭吉》なる人物から作者が聞いた話という形式をとりますが、鏡花自身の体験が色濃く反映されていると考えられ、幻想譚の多い鏡花作品にあって、身近な出来事を飾らずにとりあげた数少ない作品。その叙述方法に注目しながら、鏡花夫妻と少女との交流をたどった西尾先生ならではの興味深い講座になりました。(講座解説による。)
2023.02.03
12月19日(月)東浦弘樹氏講座「アルベール・カミュの『カリギュラ』、その意味と演出---小栗旬と菅田将暉」開催。 小説家・哲学者と同時に優れた劇作家でもあったカミュの戯曲『カリギュラ』。東浦先生は近年に上演されたこの戯曲の舞台作品を取り上げながらお話されました。その中でカリギュラの「高度な自殺」とされる結末、部下のエンリコにおよそ不可能な「月を取って来い」の命令。カリギュラは、死を目前にして激しく鏡の中の自己に向き合い語りかけ、やがて滅することを選ぶ。 ストーリーに織り込まれるそれらの意味をみごとに解説され、ご自身が重なるカミュが語った「舞台の幸福」に言及されました。
2023.01.08
11月21日(月)吉川仁子氏講座「志賀直哉『流行感冒』を読む」開催。コロナの終息がなお見通せないまま、本年を迎えます。吉川先生は、『流行感冒』の主人公の「私」(志賀直哉)の潔癖な性質に焦点を当てながら「主人公(志賀直哉)は、石が嘘までついて芝居を見に行ったことに対する憤りと、その後、子どもの病気に対する心を込めた奮闘ぶりが、実は同じものなのかも知れない」(当館解説)と思う、その心の変化がこの小説にみごとに描かれていることをお話され、今日に届いた志賀直哉の迫真のリアリズムを解説されました。
2022.11.13
10月10日(月)10時30分〜12時 深谷聡氏講座「写実画家・野田弘志 その作品と、目指す『真理』」深谷先生には奈良県立美術館にて開催の特別展、野田弘志についてお話をいただきました。野田弘志(1936-)は、一例に加賀乙彦『湿原』(朝日新聞連載)の挿画を描いており、数々の受賞に輝く。深谷先生は野田弘志のリアリズムと併せて絵画のリアリズムを歴史的視点から解説されました。写真技術の向上によるその衰退について触れられ、今日にみる野田弘志独自のリアリズムを作品を通じてお話されました。志賀直哉もリアリズムを以って優れた作品を書き上げており、深くリアリズムの精神がわれわれに語るところを述べられ、興味の尽きないお話になりました。
2022.10.07
10月3日、佐藤有希子氏講座「毘沙門天像の成立と展開」開催。佐藤先生には刊行されました同名のご研究をお話いただき、ひろくインド、ホータン、長安周辺、敦煌莫高窟、四川省などの地に渡った毘沙門天像の伝播を個々の作品例に解説されました。日本における2、3の例を挙げてみれば、京都東寺講堂多聞天像、西大寺十二天画像、比叡山延暦寺の毘沙門天像などがあり、なかでも京都清涼寺のもの(11世紀前半)は優れた作品例であり、京都青蓮院の像(13世紀初頭)は快慶の作として知られます。それらの作品は遠く炎熱のシルクロードを通してはるばると日本にもたらされた古代の文化のかたちでもあり、文化とは何か。このことについて深く示唆されました本日の講座でした。
2022.09.18
予定しておりました9月19日佐藤有希子先生の講座は台風14号到来のため、中止とし、改めて10月3日(月)午後2時~3時30分に実施させていただきます。よろしくお願いいたします
2022.09.15
りずむ第十一号 リポジトリ ホームページに公開
2022.09.07
10月17日(月)に予定しておりました深谷聡先生の講座が10月10日(月)10時30分~12時に変更になりました。申し訳ありませんが、よろしくお願い申し上げます
2022.08.20
2022/8/15日 平瀬礼太氏講座「戦争と美術」開催。この日は未曾有の惨禍をもたらした第二次世界大戦から77年目の終戦記念日。平瀬先生は戦争が美術の空白を意味したのではなく、二つは浸透しあって戦争が美術の表現を求め、美術が戦争を主題とするこの時代の偽らざる姿を今日に遺された絵画や彫刻からお話されました。さながら美術館の展示品を観賞するがごとく紀元前3千年のエジプト彫刻から目下のウクライナとロシアの戦争に及んだ本日の講座は美術のもつ社会的意味の大きさを深く示唆するものになりました。
2022.07.13
2022年7月18日(月)に予定しておりました西尾元伸先生の講座「泉鏡花『薺(なずな)』・『蝶々の目』とその叙述について」は中止となり、新年2023年1月16日(月)10時30分~12時に延期させていただきます。よろしくお願い申し上げます。
2022.06.28
6月20日(月)講座、呉谷充利「志賀直哉の大山の一夜~『暗夜行路』大山の一夜から志賀文学を考える」開催。志賀直哉は優れた作品にはつよいリズムがあるという。このリズムについて考察した近年の一著作山崎正和『リズムの哲学ノート』に従いながら『暗夜行路』を締めくくった大山の一夜の描写を考えてみました。じつはこの作品はもっとも初期の「イヅク川」から「剃刀」「和解」を経て完成を見ているといえ、それらの作品を貫いた「序破急(山崎正和)」の展開を探り、大山の一夜が窮境に大自然に共振した身体の世界であったとし、その世界はオイゲン・ヘリゲルが『弓と禅』に描く身体に連なることを述べました。
2022.04.08
春の訪れにこころも和みます。本年度、会の講座の日程とご担当の先生方をホームページに挙げました。ご来聴をお待ちしております。
2022.02.10
1月17日(月)宮武慶之氏講座「白醉庵・吉村観阿と奈良」開催。宮武先生には『りずむ第九号』に「谷本知平についてー新出の川端康成書簡二通との関係」をご寄稿いただき、新聞各紙に大きく取り上げられました。今回はご専門の「茶」の美についてお話され、奈良にゆかりのある茶人吉村観阿が当時目利きとして知られ、松平不昧の茶会に招かれていたことに触れられました。先生は、遠州から不昧、そして観阿へとつづく美の世界を資料を通して示されました。茶器の美を鑑定する目利きというのは、いわば作られた作品を使う側からその価値を見定めるのであり、その使い手に新たな精神的価値を生む。敷衍すれば江戸期の茶人にみるこの文化論は改めて今日に問われる重要な観点であるように思われます。
2022.01.13
 新年明けましておめでとうございます                       本年もよろしくお願い申し上げます                                                                           12月20日(月)、井上克人氏講座「日本人の美意識ー〈時の推移〉に寄せる鋭敏な感受性ー」開催。井上先生は自身の哲学研究の傍ら永く培われた副題のとおり鋭敏な感受性において古寺、古仏が留める時の流れににほひ立つ美の世界を話され、作品の美にいわば屋上屋を架すその美の有り様に日本人の独特の美的精神を示されました。古都奈良、昭和初期にここに居を構えた志賀直哉の一旧居、そこに今なお流れる日本人の美にたいするこの心持ちに聴講者は深く名状しがたいある感動を憶えたに違いありません。
2021.11.22
11月15日(月) 吉川仁子氏講座《芥川龍之介「玄鶴山房」ー原稿から見えてくるものー》開催。「玄鶴山房」は芥川龍之介が死の半年前に執筆した短編。吉川先生は、阪本龍門文庫に収蔵されていた自筆原稿に丹念に眼を通されて、芥川がこの作品に込めたものを探られ、かれが人間として生きる苦痛を描いていることに触れられました。作品が書かれたのはかれの死の半年前であったことを想えば、その内面が深く投影されたものであったとも考えられます。ちなみに、芥川龍之介は志賀直哉の文体の率直さを称え、「志賀直哉氏はこの人生を立派に生きている作家」であると書いています。志賀は芥川の対極にあった作家であったのかも知れません。
2021.11.05
10月25日(月)、松川綾子氏(奈良県立美術館)講座「近代奈良の異才 森川杜園の芸術」開催。森川杜園は奈良に生まれた彫工(1820-1894)。狂言師でもあつたという。奈良の祭礼はまたそれを飾る人形を求め、杜園はこれを一刀彫に彫る。古都に脈々と伝わる若宮神社の祭り。杜園の人形はそこに起源をもつ。奈良人形と称されるその作品は、はるかな時を越えて、今に届く。明治という近代に新たな命をみごとに表現した杜園の作品群は9月23日から11月14日まで奈良県立美術館にて展示中。
2021.10.26
9月20日(月) 東浦弘樹氏講座「文学・映画に見るパンデミックーカミュの『ペスト』を中心に」開催。松本清張の『砂の器』や映画『バイオ・ハザード』など、伝染病を描いた文学作品や映画が挙げながら、東浦先生はこのなかでカミュの『ペスト』について主題的に述べられ、この作品の巧みな仕掛けと細部に現れるその描写の卓抜さを示しながら、ペストとの戦いの根元に愛と幸福の希求がなければならないことを作中の人物に述べる。スペイン風邪の流行にあい対し、人間の様を描いた志賀直哉の『流行感冒』もこれに似た視点を持つ。災厄に対した真のテーマとは人間そのものへの問いに他ならなかった。
2021.09.08
興味深いニュース!平瀬礼太氏著「住喜代志の戦争」(『りずむ 第七号』)に述べられる住喜代志が「劇団印象」による『藤田嗣治〜白い暗闘〜』のなかで近々演じられます。日程: 新宿梁山泊、2021/9/21〜9/20、東京都小劇場B1、2021/10/27~11/2
2021.08.18
8月16日(月)平瀬礼太氏講座「亡き兵士に捧げるイメージ」。終戦76年を迎える鎮魂の八月、戦没者を象った美濃善光寺の軍服の人形群(岐阜県美濃市)。平瀬先生は、戦争と美術についてご研究を重ねられて、みごとな手腕でこの人形群を発掘され、戦没者の顕彰とかけがえのない命という、根本の問いを発せられながら、群像への深い悲しみと裏腹な共感、否戦への固い気持・・・入り混じる自身の胸中を吐露されました。「戦没者が自らの死になぜ軍人の姿でなければならないのか」と。簡単な問題ではない。古都の昼下がり、主なき庭で、高く鳴く一匹の蝉。
2021.08.09
2021年7月19日、第二回講座、西尾元伸氏「泉鏡花の戯曲『天守物語』を読む」開催。志賀直哉が13,4歳のころ読んでから、その後心酔したという、泉鏡花について、お話をいただきました。日本の城郭が関心を惹く昨今、泉鏡花の『天守物語』は心ひかれるテーマです。西尾先生は、その戯曲は視覚的のみならず聴覚的な音を重要な演出要素としているとされ、その効果が別次元の世界へと誘う、幻想的なその非日常性において人間の現実社会の空しさが浮き上がるこの作品の深い魅力に触れられました。ご講座はまた古都の美へと誘われるひとときにもなりました。
2021.06.24
2021年度第一回志賀直哉旧居特別講座 呉谷充利「川端康成、上方の人ー志賀直哉、谷崎潤一郎、川端康成にみる表現ー」。東京から関西に移住し、作品の完成を見た志賀直哉と谷崎潤一郎。関西から東京に出て自身の文学を築いた川端康成。この傑出した三人の作家の描写を読み比べ、その表現における違いを示した。上方の地で培われた川端康成の文学的素養は「新感覚派」の文体においてみごとに開花する。「いき」に現わされる江戸、東京の美的精神にたいして、川端康成のそれを「すい」とし、今日における上方の美的精神の復権に触れる。(奈良新聞記事あり「3作家の美」 6.22)
2021.06.11
今年度 志賀直哉旧居特別講座 第1回 川端康成、上方の人 —志賀直哉、谷崎潤一郎、川端康成にみる表現— 6月21日(月)10:30~12:00 呉谷充利
2021.05.14
りずむ 第十号 ー作品にみる人間模様ー リポジトリ 公開。
2021.05.07
第1回 「白醉庵・吉村観阿と奈良」宮武慶之先生、5月17日(月)10:30~12:00 ⇒ 緊急事態宣言下のため、延期とし、改めまして、新年1月17日(月、10:30~12:00)に開講(予定)させていただきます。
2021.03.27
2021年度 志賀直哉旧居講座(白樺サロンの会) —令和の時を迎えて、奈良ふたたび (続) —  桜の咲くころを迎え、コロナの収束が待たれます。 志賀直哉旧居特別講座全8回を5月17日(月)〜12月20日(月)にわたって各月一回予定しております。ご希望の方は早目に志賀直哉旧居(tel0742-26-8460)までご連絡いただければ幸いです(人数制限あり)。詳細は学校法人奈良学園セミナーハウス 志賀直哉旧居ホームページにて。
2021.01.19
2021年1月18日(月)呉谷充利、講座「興福寺北円堂「無着像」—奈良の美と日本文化—」。奈良の新年を迎え、運慶の「無著像」が主題となる本講座は前回の「寧楽(なら)の美—法隆寺五重塔釈迦涅槃塑像—」につづく。この彫像は鎌倉リアリズムと称されるのであるが、西欧19世紀の客観的、社会的リアリズムとは違うものがあるとし、その違いを心身を一にする表現に見る。さらに、この彫像に道元や親鸞の思想と相通ずるものを見て、南都にみる中世の美の頂点をいう。コロナ禍収まらぬ中、来聴された方々に深く感謝申し上げます。
2021.01.04
 新年あけましておめでとうございます   志賀直哉旧居講座の本年の開催を願って、5月から開講を予定しております。旧年の講座へのご参加を深くお礼申し上げます。         本年もよろしくお願い申し上げます
2020.12.27
12月21日(月)吉川仁子氏による講座「「志賀直哉『網走まで』を読む」。「網走まで」(明治41) は志賀直哉25歳のときの作品で、微に入り細にいたる文体がすでにたしかなものになっており、処女作ともいわれる。この短篇は網走に向かう車中母子一家の寸景をみごとに描いたもので、作者はそのリアリズムに一家の内面を想像している。吉川先生はこの短篇の草稿版や初筆版を取り上げながら削除や表現の改編を示され、作品に登場する鉄道や人物の時代考証はこの作品の実世界を再現するもので、年末の志賀旧居講座の味わい深いひとときとなりました。
2020.11.19
11月16日(月)森田真生氏による「数学を通して『人間』を考える」。文系から転入された数学科を出て「独立研究者」の道を歩まれ、高い評価を得た『数学する身体』。自らの思想が深くその著作に在った岡潔、熊谷守一の絵、熊谷と親交のあった志賀直哉に及ぶ、講座でした。人間とはその弱さがじつは本来の姿であり、この見方で自然と人間をみるとき、豊かな生が現われる。コロナ:人間 (発熱)=人間: 地球(温暖化)の比喩は今日の文明を深く考えさせるものになりました。紅葉の映える古都の秋、コロナの終息が待たれます。
2020.10.31
今季第一回志賀直哉旧居講座(白樺サロンの会)は深谷聡氏(奈良県立美術館)による「プラティスラヴァ国際絵本絵画展について」この世界絵画展はスロバキア共和国の首都プラティスラヴァで2年ごとの最大の絵本原画コンクール。2019年10月開催の第27回展に受章の現物作品をお見せになりながら深谷先生は色とりどり説明され、みごとな色彩に表現されるその美しさに受講者は感嘆し、絵本と云う絵と色彩と物語を一つにしたその世界に見とれ、新型コロナの暗雲を忘れ去らせる旧居のひとときになりました。
2020.10.09
今季「白樺サロンの会」講座が10月26日から始まります!コロナ感染対策のため、人数を制限しての実施になりますが、やむを得ません。講座の概要は志賀直哉旧居ホームページ(学校法人奈良学園)に公開されております。ご希望の方には、早目に志賀直哉旧居までご連絡をいただければ幸いです。よろしくお願い申し上げます。
2020.07.06
本日は、奈良文化教育記者クラブにおいて、谷本知平の妹様に宛てた未公開の川端康成書簡二通について、宮武慶之氏による記者会見が行なわれ、新聞各社、TV報道各局にわたる多彩な取材をいただきました。コロナ蔓延、水害と厄災のつづくなか、各社、各局のお集りにお礼申し上げます(宮武慶之氏の論考は『りずむ 第九号』、2020.3、に掲載)。「念々刻々生きる限り立派に仕事してゐきたいものです。」戦時下に立つこの文学者の矜持が手紙に綴られ、ありのままのその風貌を今日のわれわれに伝える。
2020.04.10
のどかな春景色とは真逆の新型コロナウィルスの蔓延、日毎のひろがりが心底心配されます…。今、カミュ『ペスト」が読まれているようですね。『りずむ』第六号にご寄稿の東浦弘樹氏「『ペスト』再読」を紹介させていただきます!ご関心のある方は「白樺サロンの会」本ホームページのリポジトリ欄を検索し、『りずむ』第六号のところからこのテーマの表示部分をダウンロードしてみてください!示唆に富んだ味わい深い論考です。
2019.11.19
11/18(月)瀧本和成氏講座「森鷗外と奈良 -帝室博物館総長としての為事-」。先生は「日本近代の文学のもとを辿ってゆくとそこに鷗外がいます」と話されました。鷗外は衛生学の医学者として軍医総監となり、ドイツ留学時の作品「舞姫」にはじまる文学者、翻訳家として「オフェーリアの歌」、日本で初めての評論雑誌「しがらみ草紙」の刊行、さらに優れた史伝「渋江抽斎」を遺しました。明治近代の文化的礎を築いた鷗外のご解説はありありとしたその風貌をとらえ、傑出したこの知識人の最晩年の為し事が奈良の地にあることに光を当てられ、秋景色の深まる本年最後の感銘深い講座となりました。
2019.10.18
10月14日(月)松川綾子氏講座「吉川観方―日本文化へのまなざし」が行なわれました。本年、吉川観方生誕125年・没後40年(1894-1979)を迎えます。その膨大なコレクションの寄贈が奈良県立美術館開設のきっかけになったとされます。吉川観方は優れた画家であり、蒐集家でもあり、風俗研究家でもありました。その一つ「伝淀殿画像」は有名です。奈良県立美術館開館300回記念同特別展に合わせ、松川先生は多岐にわたる吉川観方の貴重な事績を秋の深まる旧居にてお話されました。展覧会は本年の9月28日から11月17日まで開催されます。
2019.09.21
9月16 (月) 東浦弘樹氏講座「アルベール・カミュと母親 —戯曲『誤解』を中心に」。東浦先生は劇作家として俳優として独自の演劇の道を邁進されておられます。本日はカミュ戯曲「誤解」をテーマにお話されました。この文学者の作品に大きな影響を与えつづけた母親の存在があり、その存在はカミュの文学的原点であることを示唆されました。作品や手記を辿りながら、このことを検証され、人間のもっとも深いところに生きる沈黙の「愛」」をカミュの作品において解説されました。今日の社会に重要なメッセージとなる、志賀直哉旧居晩夏の一日となりました。                       
2019.09.01
8月19日(月)吉川仁子氏講座「志賀直哉と動物」。志賀直哉は代表作「城の崎にて」蜂の死の静かさ、投げた石にあたった「いもり」の不意の死を描く。動物の生は自身の文学の根幹に届く。吉川先生は『城の崎にて』『蜻蛉』『クマ』『雪の遠足』『虫と鳥』『山鳩』といった作品を紹介され、特に奈良に居を構えた時期の短篇小説『犬』をテーマにしてお話されました。生とは、人間を超え、普遍的な主題であることを志賀は文学として表現しており、言及された晩年の『山鳩』はこの志賀のまなざしが一貫したものであったことを語っています。
2019.07.24
7月15日(月)西尾元伸氏による講座「泉鏡花と〈奈良〉—『紫障子』を読む」。志賀直哉は奈良を去った昭和14年「泉鏡花の憶い出」を書いている。「化銀杏」を読んでから、後にそれが泉鏡花の作品であること知り、その文学に心酔したことを述べています。今回、先生は、泉鏡花が奈良を描いた『紫障子』を取り上げ、この作品の重層的な構成を文学の知見からお話されました。泉鏡花が奈良に見出した世界と志賀直哉が居を構えた奈良。古都がそれぞれの美しさを放って現われ、多様な美をむすんでわれわれのまえに彷彿する旧居の一日になりました。
2019.06.23
6月17日(月)平瀬礼太氏講座「終戦と美術ー藤田嗣治と住喜代志の戦後」。テーマは戦時下の画家を代表する藤田嗣治と余り知られない住喜代志について。戦後日本をはなれフランスの地で名声を博する藤田に対して、住喜代志は戦時下に美術展企画、コーディネーターをなした人物ですが戦後は職になく悲運であったようです。戦時と戦後を生きたこの二人の非難ではなく、そこに学ぶことを最後に言及されました。因に今回の資料の一部は平瀬先生がワシントン公文書館に行かれ手にされたものでした。聴講者の関心も高く熱気に包まれる、初夏旧居の午後でした。
2019.05.22
5月20日(月)第一回志賀直哉旧居特別講座、呉谷充利「寧楽の美」。法隆寺五重塔釈迦涅槃塑像に着眼した文化論。この塑像群は、釈迦入滅を前にした弟子の慟哭の悲しみを表現している。釈迦の死への悲しみを我が身の悲しみとするその表現は自ら肉体の力と表裏して一つになっている。伝来の仏像群にもルネサンスの「キリスト降下」にも見られないその力は弥生時代にみる自然崇拝に遡るという。そうした古代の人間的世界の精神化をさらに鎌倉期、北円堂「無著像」に見られるリアリズムに見ようとする。
2019.04.04
2019年度 志賀直哉旧居特別講座「古都の美、サロンのひととき」全7回(白樺サロンの会)が5月20日(第三月曜)10時30分〜12時から始まります!
2019.03.30
『りずむ ー時代にみる表現と人間ー 第八号』刊行しました!店頭取扱い 啓林堂書店(奈良店)tel.0742-20-8001 近鉄奈良駅地上すぐ(在庫あり)。インターネットによるお求めは、右上「お問い合わせ」(クリック)から。Amazonでも販売です…。
2019.02.16
「志賀直哉旧居」がBS朝日〈151〉番組「百年名家」に取り上げられます。放映は、2月17日(日)12時〜12時55分。再放送あり! 3月24日(日)12時〜12時55分。
2019.01.07
新年あけましておめでとうございます     旧年には志賀直哉旧居公開講座に多くの方々のご来聴をいただき、ありがとうございました。また『りずむ』第八号(白樺サロンの会)の刊行は3月(予定)となっております。旧年と同様によろしくお願い申し上げます
2018.12.18
12月17日、橋元淳一郎氏講座「時間と生命」。空の虹と同様に時間と空間もイリュージョンに他ならないことをアインシュタインの相対論に拠りながら話されました。時間が空間的に変化するという相対論の時間概念は実際カーナビに適用されてより高い精度を得ているという。こうした物理学的空間と生命との関わりをエントロピー(非秩序の度合い)に着眼され、この非秩序世界に抗する存在こそ、生命であるとされ、物理学的世界に戻された生命のその真の意味について話されました。古都の冬は、この悠久の生の世界を表わすがごとく、おん祭りに華やいだ一日でした…。
2018.12.01
11月19日(月)吉川仁子氏による講座『太宰治「ろまん燈籠」―創作と典拠の間―』。太宰治は志賀直哉とは作風が大きく異なる作家ですが、吉川先生はその作品のなかから「ろまん燈籠」を選ばれ、お話されました。「本人と思われる作家を登場させることで、書かれていることが実際であるように見せながら、その一方では、読者に改めて『この小説は創作ですよ』と知らしめる、今でいうメタフィクションの構造を取っていること」(解説による)を示され、この文学の世界を味わう晩秋の一日となりました。
2018.10.21
10月15日(月)飯島玲子氏による講座「絵本に見る表現の多様性~〈ブラティスラヴァ世界絵本原画展〉から~」。「ブラティスラヴァ」というスロバキアの首都名を付けるこの原画展は1967年から「地域の歴史的な背景を踏まえ、政治的対立や民族的対立を超えて子どもたちのための本を展示し、国際的交流の場をつくる目的で、開催」とされ、昨年度、世界49カ国から373組が参加、日本からも15作家が出品。講座で、そうした絵本の楽しさ、味わいを奈良県立美術館での見どころとともにお話されました。
2018.09.19
9月17日 平瀬礼太氏による講座「銅像はだるまさんなのか?」。講演のあと「目からうろこが…落ちるようでした」とお一人が平瀬先生に話しかけられました。著者の名を世に知らしめた『銅像受難の近代』(吉川弘文館 2011)から7年を経て、本日、銅像のあとさきを巡るこのテーマについて語られました。伊藤博文など、その銅像の顛末は人心の実相に触れるものでした。人々は永遠の存在を求めて金属の像をつくる…。しかし現実の人間は時を経てその像を引き倒す…。理想なくして人間世界は存在しない。が、その象徴は人々を裏切る。がまたその像が起き上がる…。この現実の人間的世界をユーモラスに描画されながら、お話されました。
2018.08.25
8月20日(月)東浦弘樹氏講座「アルベール・カミュの『カリギュラ』ー戯曲と演出」。演劇作家としてのカミュの視点から戯曲『カリギュラ』を解説された先生はローマの物語を超える人間そのものの表現に迫られ、さらに神と人間の死における対決という高度な精神の世界をカリギュラのなかに述べられました。日本と仏国でのそれぞれの戯曲『カリギュラ』を映像で紹介されながら、演出の重要な役割についても触れられ、奈良の晩夏を飾る貴重なお話に来聴された多くの方々が聴き入りました…。先生の新作「リハーサル」も秋に公演されます。
2018.07.24
7月16日、武田充啓氏による講座「志賀直哉が夏目漱石から引き継いだもの」。武田先生は漱石の「こころ」と志賀の「佐々木の場合」を作中の「手紙」を引かれながら、二つの作品の共通点と相違点を指摘されました。「佐々木の場合」に志賀直哉は「亡き夏目先生に捧ぐ」と書いており、師弟の関係をさえ思わせます。志賀直哉が夏目漱石から引き継いだものについて、漱石の「去私」、直哉における自我の肯定をテーマにして、さらに大正期における志賀の作品「范の犯罪」を挙げながら解説されました。
2018.06.23
地震のため中止の講座《柳宗悦と志賀直哉の美—世界における文化として—》が6月21日に行なわれました。お越し頂けなかったご来聴予定の方々にお詫び申し上げます。内容は、柳宗悦の民衆的工芸や志賀直哉が救世観音に見出す「私なき私」の美がドイツ文化論と仏文明論に見られる私と世界の対立を解いて一つにしており、第三の文化・文明論として日本文化があることを浮き彫りにする。文化独自の表現的「奥行き」の重要性が今日の視点に述べられました(『りずむ』七号詳述。当日一部TV収録)。
2018.06.18
至急ご連絡です!本日(6月18日)の志賀直哉旧居講座《柳宗悦と志賀直哉の美—世界における文化として—》は地震のため、中止になりました。講座の代替日は、6月21日(木)、午前10時30分〜12時に志賀直哉旧居で行なわれます。講座のお問い合わせは、0742-26-6490 (志賀直哉旧居)まで!
2018.05.22
5月21日、柏木隆雄氏による本年最初の講座「会津八一『南京新唱の世界』」が行なわれました。その歌集に歌われる美しさの解説に来聴者は聴き入りました。講演は仏文学者として知られる柏木隆雄氏ご自身の文学の世界を語るものでもあり、その世界は美的で、文学的、さらには人間そのものに迫るものでありました。ひと目を引くことのなかったこの歌集がその地位を確かなものにして行く道程も文化の真の意味をわれわれに問いかけるもので、来聴者の深い感銘が多く講演後に聞かれました。初夏の奈良、お話頂いた柏木先生にお礼申し上げます。
2018.04.11
2018年4月10日 志賀直哉他界を偲ぶ熊谷守一の弔文が見つかり、遺族から奈良学園(志賀直哉旧居)に寄贈される。画家のその筆致にわれわれはこの稀有な文学者の死に立ち会う。赤貧に画業を貫き、生の本質を独自の画風に極めた画家のこの文学者への哀惜。鬼籍の文学者もまた生を眼差して作品に描ききろうとした。僅かな一文に相通ずる精神の存在が滲む…。絵画と文学に共有されて現われる生は崇高さを帯びる。その弔文である。 「拝呈 御主人様 御他界の由まことに淋しい事で御座います 故人の御冥福を御祈りいたします 頓首 十一月二十四日 熊谷守一 志賀康子様」
2018.03.16
平成30年度 志賀直哉旧居講座「咲く花の薫ふがごとく奈良浪漫、逍遥、思索…」5月21日(月)からはじまります!~白樺サロンの会
2018.02.07
お知らせ! 雑誌『リずむ』(白樺サロンの会)第六号より啓林堂書店(奈良店)にてご購入いただけます。奈良市西御門町1-1 TEL.0742-20-8001 お手にしていただければ、と存じます  
2018.01.07
新年 明けましておめでとうございます
2017.11.25
11月20日(月)本年度最後の志賀直哉旧居講座は橋元淳一郎氏「宇宙と生命の謎を追う—数式なしのやさしいサイエンス」。最先端の物理学に哲学の見方を交え、宇宙と生命の謎に迫る極限の知の世界をお話しされました。われわれの身体は孤立した存在ではなく、じつは宇宙そのものでさえある…。宇宙のはじまりといまここに存在するわれわれ人間とのあいだは、無縁の真空の世界でなくまさに連続してつながっている、先生の瞠目すべき思索が述べられました。中庭の紅葉もまたこの宇宙の世界の美しさを語っているかのごとく晩秋深まる一日でした…。
2017.10.26
10月23日(月) 松川綾子氏(奈良県立美術館)による講座「幻の画家・不染鉄」(国民文化祭記念講座)予定通り開催。没後40年を迎え、華々しい活躍を見せながらも戦後画壇をはなれ、奈良で独自の世界を生み出した画家不染鉄の初期の作品から晩年にわたる180点の作品について解説されました。名の通った画家の紹介でない分、展示は新鮮で興味深くその画の世界に惹かれます。展覧会は11月5日(日)まで。晩秋の奈良、不染鉄の画が『郷愁の家』『憧憬の散水』『聖なる塔・富士』『孤高の海』『回想の風景』、5つのテーマ別に展示。
2017.10.22
至急お伝え致します! 10月23日(月) 松川綾子先生(奈良県立美術館指導学芸員)によるご講座「幻の画家・不染鉄(ふせんてつ)~特別展「没後40年 幻の画家 不染鉄」(仮称)の開催に際して~ 」(国民文化祭記念講座)について * 台風21号接近のため、講座開催当日「10月23日(月)」の午前7時現在、奈良県北部に「暴風警報」が発令の場合、講座は中止となります。その場合、当講座振替日を追って改めてお知らせさせていただきます…よろしくお願い申し上げます
2017.09.19
9月18日月曜日、東浦弘樹氏講座「アルベール・カミュの『転落』を読む」開催。旧居在住の昭和8年に返れば、志賀直哉はここでアンドレ・ジイド「『女の学校・ロベエル』を読む」を書いている。このときから80年を越える時を経て、新たにフランス文学者カミュの『転落』についてお話されました。主人公の男がバーで出会った初対面の人間に、自分の告白を聞かせる物語『転落』の話はこうした経緯からもじつに貴重なものでした。また東浦先生は劇作家と同時に俳優として演劇の道を歩まれておられ、近日公演「オズの部屋探し」が待たれます。
2017.08.24
8月21日(月)吉川仁子氏による第四回講座「森鷗外と奈良――森鷗外『奈良五十首』をめぐって」。今夏の酷暑にもかかわらず多数の方々のご来聴をいただきました。帝室博物館(明治28年開館 現在の奈良国立博物館)総長の任にあった森鷗外の近代短歌「奈良五十首」について、正倉院、東大寺、元興寺址をめぐる奈良の地、さらに途中京都をも交える鷗外のその足跡とともに、重要な資料をもって紹介され、鷗外の奈良という大正期の貴重な一ページがその歌において味読鑑賞されました。
2017.07.20
7月17日第三回講座(白樺サロンの会)平瀬礼太氏「日本洋画の揺籃期から 西日本を中心に」。氏は「戦争と美術」という新たな分野を開拓した美術史家です。西洋の油絵の技法が市井にひろまってゆく過程が丹念な史料の検証から明らかにされ、まことにその内容は興味のそそられるものでした。今回の講座は、日本近代の洋画の社会相ともいうべきものが主題となっており、氏ならではの美術の実相が明るみに出される。日本近代の洋画の揺籃期に見る画工の真面目さがその真面目さゆえにかえっておかしみを誘う・・・。
2017.06.21
6月19日第二回講座(白樺サロンの会)呉谷充利「文学に見る東西 -志賀直哉と谷崎潤一郎の関西移住」。多くの方々のご来聴をお礼申し上げます。二人の関西移住は漱石が経験することのなかった関西の美の世界「粋(すい)」、志賀は「東洋の古美術」谷崎は「大阪弁」との出会いでありました。かれらは新たな精神をもって自らの文学を発展させ精妍なものにして行きます。講座では、さらに明治の近代的自我を「いき」(漱石)と「すい」(上方)において見ながら、関西移住がこの二人の文学者に果たした意味を考えてみました。詳しくは『りずむ 第六号』所収 「文学にみる東西-志賀直哉と谷崎潤一郎の関西移住」を。ご関心に合わせ、ご批判等いただければ幸甚です。
2017.05.16
5月15日(月) 本年度第一回志賀直哉旧居特別講座(白樺サロンの会)郭南燕先生「なぜ志賀直哉は日本語を捨てようとしたのか」 多くの来聴者を前に、いわば評判の良くないこの発言がじつはこの文学者の変わらない考えであった(52歳〜78歳の間)ことを資料に基づきながら、その発言の真の意味について述べられました。要するに、志賀直哉によれば「明瞭な思考や思想の表現において日本語の言葉は不自由なところがあり、世界的な文学の成立に届きにくいのではないか」ということであり、文学の表現における信条としてこれを受け止めれば、改めて傾聴に値する国語論であるように思われました。日本語をフランス語に換えることはともかくとしても・・・深く志賀直哉その人を実感する、初夏の緑に映える旧居の一日でした。
2017.05.05
志賀直哉旧居特別講座(白樺サロンの会)「美と文学の東西、文明としての戦後」が「文学と美を考える」(5月〜11月)講座として読売新聞(2017年4月27日朝刊奈良版)に掲載されました。文化庁が京都に移転が決まりました。関西の美と文学、広汎な思想の一翼を担うべく奈良ならではの文化の発信に微力を尽くしたく思います。緑陰に早、初夏。初回は5月15日 郭 南燕先生(国際日本文化センター准教授)「なぜ志賀直哉は日本語を捨てようとしたのか?」二回目は 6月19日 呉谷充利(建築史家)「文学に見る東西 —志賀直哉と谷崎潤一郎の関西移住—」詳しくは奈良学園「志賀直哉旧居」ホームページで! 
2017.03.14
平成29年度志賀直哉旧居特別講座(白樺サロンの会)「美と文学の東西、文明としての戦後 ー志賀直哉旧居から」がいよいよ5月から始まります!  ご来聴をお待ちしております・・・。
2017.01.04
新年、明けましておめでとうございます。穏やかな新年を迎えます。  『りずむ 第六号—文学の東西、文明としての戦後—』は本年3月刊行予定です。   白樺サロンの会
2016.12.29
12月19日(月)吉川仁子先生による講座「夏目漱石『こころ』—「先生」の遺書が伝えるもの—が開かれました。漱石没後100年を数えるこの講座のなかで、漱石が描く「先生」の遺書は何を伝えようとするのか、吉川仁子先生はこの問いに迫られました。「こころ」の連載のあとを漱石は志賀直哉に託そうとしますが、かれは漱石のこの申し出を結局辞退することになります。今なお自身と漱石との関係をそこはかとなく漂わせているような旧居に感慨深いものを感じられながら、『こころ』の文章そのものから解釈する「テクスト論」が紐解かれ、この作品にたいするさまざまな解釈が紹介されました。「こころ」が読み解かれ、味読される本年最後の旧居の講座になりました。
2016.12.01
11月21日(月)橋元淳一郎先生による講座「物理学でみる宇宙の神秘ー実在とは何か」が開かれました。橋元先生は今日にいたる物理学研究の成果と哲学を交えて物理学がわれわれに示唆する根本の意味「ほんとうに存在するものはいったい何であるか」について話されました。古代ギリシアから今日までの思想を解説されながら「相対性理論」「量子力学」が物理学に果たした革命的な意義に触れらました。がそうした成果をもってしてもなおこの根本の問いに迫ることは出来なかったとされ、最先端の「標準理論」をご紹介されました。物理学と哲学にわたる知的興味の尽きない晩秋のお話になりました。
2016.11.11
11月21日、橋元淳一郎先生の講座「物理学で見る宇宙の神秘-- 実在とは何か」は午前の部(10時30分~12時)に行われます。 同日午後(14時開演)秋篠音楽堂で「紅葉コンサート」(入場無料)が開催されます。(ピアニストは橋元泉穂&植田未香子さん、他)ご案内まで!
2016.11.09
10月31日の白樺サロン特別講座は奈良県立美術館学芸係長の稲畑ルミ子先生をお迎えし「深遠なる中世の美と知られざる奈良の中世遺産」のお話を頂きました。古代の都平城京は廃都のごとく考えられがちですが、今回の奈良県立美術館での展覧会に合わせて、奈良中世美術の重要な意味をご説明されました。達磨寺の名品、達磨大師像、中世水墨画の美・・、とりわけ奈良の珠光、奈良に遺される世阿弥の資料に触れられ、貴重な調査に基づいて中世奈良の遺産をひも解かれました。奈良県立美術館の展覧会は10月15日から11月27日まで。
2016.10.09
2016年9月19日(月)平瀬礼太先生による講座「こいつが敵だ!冒涜のイメージ」開催!平瀬礼太氏は、ある感情を投影する現実のイメージ化としての絵、肖像画、像について、それらの作品が見る者に呼び起こす意図的な感情を指摘され、作られたイメージの世界の歴史性、社会性について話されました。気鋭の美術史家ならではのこのテーマに講座をお聴きになった方々は、現実のイメージの表現について改めて深い示唆を与えられました。
2016.09.13
8月29日 東浦弘樹先生による講座「震災後に読むーアルベール・カミュの『ペスト』」ー開催。『ペスト』が発表されたのは、第二次世界大戦の傷跡が色濃く残る1947年。アルジェリア第2の都市・オランを襲ったペストと、それと戦う人々の群像劇。また、この作品は、ナチスドイツに対するレジスタンスをも描く寓話。「東浦先生は、フランス文学者であるとともに、劇作家、俳優としても活躍されておられ、講座のなかで、先生が登場人物のセリフを読み上げられると、まるで演劇を観ているかのように、いきいきとその場面を想像することができました。」〜 奈良学園 志賀直哉旧居講座の解説から
2016.08.09
8月29日 10時30分~12時00分 東浦弘樹先生による講座「震災後に読むーアルベール・カミュの『ペスト』ーがまもなく始まります。是非、ご来聴を!  また東浦弘樹作芝居「「レミゼって呼ばないで〜または、本を飛び出したジャン・バルジャンの華麗な冒険」がフランス大使館の後援で上演。 日時・場所: 9/30(金)〜10/2(日)カフェシアター、ジャン・トゥトゥクー(大阪・花園町)。8月末までにご予約の場合、500円引き。ご期待ください!
2016.08.02
7/18 (月) 呉谷充利 「志賀直哉『暗夜行路』を読む -底なしの不安から東亜の美へ- 」 志賀直哉が『暗夜行路』に吐露する「底なしの不安焦慮」。かれが近代の科学に抱く不安が東亜の美に宥められ、ロダンの彫刻から救世観音像へとその美意識は変わる。東西の美は自然と心身の問題としてあること。『暗夜行路』が示唆する文明の問題を考えてみました。
2016.07.05
6月20日 呉谷充利「小出楢重・谷崎潤一郎と志賀直哉」  谷崎は「山間の霊気と日光とが凝り固まった」かのような「一踝の露の玉」たる吉野の「ずくし(熟柿)」の美を愛で、志賀は「大きな自然の中に溶込んで行く」自らの「陶酔感」を大山の夜空の静寂に見ます。小出楢重は奈良の江戸三で絵筆を取っています。精神と肉体の問題を谷崎の「刺青」や志賀の「大津順吉」を再読しながら、小出の絵画論を交えて考えてみました。
2016.06.12
5月16日、弦巻克二先生(奈良女子大学名誉教授)による「志賀直哉と奈良ー『暗夜行路』完成に向ってー」が行われました。「極論すれば、志賀直哉の関西在住時代には『暗夜行路』の「後篇(第四)」以後の課題―妻の過失とそれからの大山での解脱まで―が潜在し続けている。それがどのように作者に納得して書けたのかを、当時の作品(「雨蛙」「山科の記憶」「座右寶」)や事柄などを通して考えてみます。」(弦巻先生)
2016.05.03
志賀直哉旧居特別講座がはじまります!! 今回たくさんの方々から応募いただき、開講を待たず定員に達しました。有難うございました。初回は、5月16日(月)午前10時30分〜12時00分 志賀直哉と奈良―「暗夜行路」完成に向かって―講師:奈良女子大学名誉教授 弦巻克二   
2016.04.29
東浦弘樹氏 新作。タイトルは『レミゼって呼ばないで~または、本を飛び出したジャン・バルジャンの華麗な冒険』。 公演は9月30日(金)、10月1日(土)、2日(日)で、場所は大阪・花園町のカフェ+ギャラリージャン・トゥトゥク。  ご期待ください!
2016.04.08
新刊『りずむ』第五号 発売。"Contact us"クリックまたはAmazonで購入できます。
2016.03.22
平成28年度志賀直哉旧居特別講座「移ろう情景と内なる世界」が5月からはじまります。奈良ならではの珠玉の講座が志賀直哉旧居でおこなわれます。ご参加をお待ちしております。 〜「白樺サロンの会」
2016.03.05
6千点を越える志賀直哉の文学資料が日本近代文学館に寄贈!(新聞各紙記事 3月5日)。志賀直哉の文学における精神的リアリズムを証言する第一級の資料、叔父直方宛の未投函書簡(大正3年12月1日)は、奈良県立美術館と呉谷充利 (相愛大学教授)による志賀直哉遺品調査において見つかったものです。
2016.02.09
『りずむ 第五号』3月末 刊行予定。タイトルは「たゆたう美と芸術あるいは時」 ご期待ください!
2016.01.29
志賀直哉旧居が奈良県指定文化財に決定!まことに慶賀な事と存じます。この旧居の辿った道のりを思うとき、まことに感慨深いものがあります。近代の貴重な遺産が古都奈良の一角を占める。奈良の新しいページが開かれます。学校法人奈良学園様には改めてお慶び申し上げます。
2016.01.04
昨年度最後の志賀直哉旧居特別講座は吉川仁子氏による「夏目漱石「彼岸過迄」。短編を集めて構成されたこの作品の主題性が探られました。登場人物がはらむ矛盾や作品中に多く使われている対比表現が単なるレトリックではなく、ダブル・バインド、あるいは矛盾と見える表現で語られるほかない現実であり、「雨の降る日」でひな子の急死や自身が生死をさまよった経験が投影されていることも指摘。「彼岸過迄」の意味にも触れ、漱石が提示している「不思議」について解説。子どもの死を通して人智の及ばない現実を表し、そうしたものへの畏れが須永の意識に描かれていることも述べられました。(〜学校法人奈良学園ニュース&トピックスより抜粋。)
2015.12.04
12月21日(月曜日 10時40分~12時10分) 本年最後の「白樺サロンの会」講座、吉川仁子先生(奈良女子大学)の「彼岸過迄」が志賀直哉旧居(奈良市高畑町)で行われます。夏目漱石は、明治43年8月に修善寺温泉で胃病を悪化させ30分間の人事不省に陥り、命の危機に瀕しました。この大病の後、執筆される連載小説が『彼岸過迄』で「短篇を重ね」て「1長篇を構成する」という短篇連鎖の手法を取っています。作中には、連載の直前の明治44年11月に幼くして急死した五女ひな子の死をそのまま素材として取り込んだ「雨の降る日」という章があります。この章に着目されて、この作品の全体が改めて読み解かれ、味読されます。
2015.11.26
自ら訪ねられた作品ゆかりの地、セント・アイヴスとロドメルの美しい写真をご紹介されながら、作家との関係が紐解かれました。ヴァージニア・ウルフ、1882年、イギリスが大英王国として栄えたころに生まれ、第2次世界大戦の戦火が激しくなる1941年、自ら命を絶った女性作家。彼女は、人物の内面を描くというそれまでのリアリズムとは対照的な新しい小説形式に挑戦した作家のひとり。その手法は「意識の流れの手法」と呼ばれる。作品のなかから『灯台へ』と『幕間』が今回取り上げられ、モダニズム文学の一世界が語られました。(〜学校法人奈良学園ニュース&トピックスより)
2015.11.09
【志賀直哉旧居】11/16(月)文学作品の美しい風景が紹介されます!石川玲子先生による特別講座「ヴァージニア・ウルフゆかりの土地」イングランドの南西コーンウォール州にあり、レンガと白壁の建物、ペールブルーの海が美しい町サント・アイヴス。ロンドンの南方イースト・サセックス州の果てしなくうねる丘陵地帯にある小さな村ロッドメル。イギリスが生んだ作家ヴァージニア・ウルフ(1882-1941)と深い関わりを持ち、その作品にも大きな影響を与えた土地の風景や彼女が過ごした田舎家の写真を紹介しながら、イギリス文学の一名作を味わいます。
2015.10.31
平成27年10月19日(月)志賀直哉旧居特別講座は橋元淳一郎先生による「時空と生命ー相対論と量子論から見える時間と空間」宇宙の歴史にひそむ生命の誕生は物質の偶然の事実を超える謎をもつと話され、この生命をつつむ宇宙の時空は相対論と量子論の見方からすればその始まりと終わりは同じであり、時空のない状態になる。常識を超える科学の世界が披露されました。秋の一日、ご遠方からの来館者、専門家を交え、目からうろこの…最先端科学のサロンとなりました。
2015.10.09
10月10日(土)11日 (日)上演 チーム銀河 × 劇的集団まわりみち'39 「チェーホフなんか知らない ~または、余はいかにしてロシアの文豪となりしか~」 【作】東浦 弘樹 全館予約満席。 毎日新聞(10月7日)神戸新聞(10月6日)に詳細な掲載記事。 劇作家東浦弘樹氏誕生の記念碑的作品上演!
2015.09.27
2015年9月21日、梁瀬 健「切手に採用された美術品」志賀直哉旧居特別講座が行われました。美術品の写真絵葉書にその美術品の切手を貼る。美のハンター、梁瀬先生のご発案によるこの方法を「梁瀬式絵葉書切手」と改めて呼んでみたい。郵便はがきに美を愉しむ画期的な仕方が志賀直哉旧居から発信されました。奈良の秋の一日でした。
2015.09.13
秋の一日、お芝居ご鑑賞のご案内! カミュ研究の東浦弘樹先生作の芝居が上演されます! 『チェーホフなんか知らない -または、余はいかにしてロシアの文豪となりしか-』 ◆ 日時 ◆ 1) 10月10日(土)【 18:00~ 】 2) 10月11日(日)【 11:00~ 】 3) 10月11日(日)【 15:00~ 】 ※開場は開演30分前です。 ◆ 会場 ◆ アトリエS-pace(大阪) 〒536-0007 大阪府大阪市城東区成育2-5-4 06-6934-0014 ◆ 料金 ◆ 【前売】¥2,000- 【当日】¥2,500-
2015.08.22
美術史家、平瀬礼太氏の講座「戦争と美術」が志賀直哉旧居で行われました。「戦後、美術批評家にとって戦中の美術は『パンドラの箱』だった」(平瀬礼太氏)という言葉がみごとにその有様を捉えています。「作品の多くは行き先がわからず、また敗戦の際に焼却されたが、つぶさに見ていくと、それらは決して一様ではなく、また『空白』などではないことがわかる。これらに蓋をするのではなく、客観的に見ていきたい」「それが戦争を考える一つの視点、きっかけになれば」とも(〜学校法人奈良学園ニュース&トピックスより。他、同、朝日新聞奈良版記事、当日取材記事として毎日新聞奈良版、奈良新聞)
2015.07.31
この夏、戦後70年を迎えます。8月17日(月)美術史家平瀬礼太先生に「戦争と美術」のテーマでご講座をいただきます!奈良高畑、志賀直哉旧居 にぜひ足をお運びください。美術を通した戦争と人間の真実に迫るお話です。詳しくは「奈良学園セミナーハウス 志賀直哉旧居」(ホームページ)をご覧ください!
2015.07.22
白樺サロンの会第3回 講座は 関西学院大学東浦弘樹教授「カミュの『異邦人』、カミュと『異邦人』」! 「(この祖母の葬式のとき)……悲しくないのに、悲しい振りをした自分自身にぎこちなさを感じたカミュは、『異邦人』の主人公・ムルソーに「自分の感情の仮面をまとわせることを拒む」生き方をさせたのではないか。人間に嘘を要求する社会、またそのような社会に適応している人びとをカミュはこの作品のなかで批判していると東浦先生は述べられました。」(奈良学園「ニュース&トピクッス」から)  これにたいして、志賀直哉もまた書いています。「一つの心理—自己に起こっている心理状態—それを正確に捕える事は容易ならぬ事だ。捕えても、捕えても、その手からもれているものが残るだろう。……こうなると絶対に真実な懺悔などいうものはあり得ないかも知れぬ」(「手帖から」志賀直哉旧居にて)。まさに日本の文学とフランスの文学がこのサロンでつながる感動的な今日の東浦先生のご講座でした!
2015.06.18
志賀直哉旧居特別講座第2回「白樺サロン」奈良女子大学の弦巻克二名誉教授による「志賀直哉と池田小菊」を開催。 「志賀直哉と出会った小菊は、彼に亡き父の面影を重ね、志賀家の家庭教師を志願。昭和3年に教師を退職し志賀の門下に入る。昭和11年に小林秀雄の推薦で「鳩」を発表、昭和13年に志賀直哉との交流を描いた「奈良」は芥川賞候補作品になる。」 (以上、学校法人奈良学園 ニュース&トピックスより)
2015.06.06
仏文学者 杉本秀太郎さんご逝去。先生には「白樺サロンの会」設立の発起人に名を連ねていただきました。つつしんでご冥福をお祈りします。
2015.05.26
『りずむ』第四号、リポジトリを公開アップロードしました!
2015.05.22
平成27年度志賀直哉旧居特別講座(白樺サロンの会)始まりました。早、初夏。第一回講座は呉谷充利「志賀直哉の国語問題とひらがなー文字と文学ー」。志賀直哉の国語問題(1946)、言語の固有性と普遍性はまた21世紀 グローバル社会にみる文化の固有性と世界の共通性の問題につながる。
2015.05.01
月刊大和路ならら創刊200号記念号 「志賀直哉の奈良 旧居に文豪の眼差しを追って」 奈良女子大学名誉教授 弦巻克二さんインタビュー「作家が愛した春日原始林の自然」 興味津々の記事満載!
2015.04.09
りずむ第四号、刊行。AmazonあるいはContact usまで!
2015.03.20
平成27年度 志賀直哉旧居特別講座(白樺サロンの会)がはじまります。今年度は5月から12月まで、月一回(月曜日、10時40分〜12時10分)の講座で進行します。全体のテーマは「名作、名品、生の世界」。新しくフランス文学ご研究の東浦弘樹先生には「カミュ」についてお話していただきます。ご期待ください。平成27年度 志賀直哉旧居特別講座(白樺サロンの会)をクリックし、pdfをひらいてみてください。全講座の内容が分かります。問い合わせは「志賀直哉旧居」℡0742・26・6490まで。
2015.03.09
吉川仁子先生、「なら学東京講座」で作家、池田小菊と作品「ナハロフカ」についてご講演(会場: 兵庫県東京事務所 2015年3月7日)〜添付は、2014.4.19 付記事
2015.02.03
りずむ 第四号 近刊(四月刊行 予定) もくじを Site Menuに!Amazon 近日発売(平成27年4月9日 予約可)、または本ホームページ Contact us(右下欄↓)にご連絡ください。
2015.01.27
1月24日(土)志賀直哉旧居から若草山山焼き鑑賞会。みごとな花火が「春日なるみかさの」夜空に!主なき旧居の一隅に時が流れる。
2015.01.06
新年あけましておめでとうございます。「白樺サロンの会」は本年度末に『りずむ』第四号を刊行予定しております。ご期待ください!
2014.12.06
[重要なお知らせ] このたび読者の便に供したく、『りずむ』(創刊号、第二号、第三号)誌上にご発表執筆者の全文をリポジトリとして「白樺サロンの会 ホームページ」に公開掲載しました。ご関心のページまで、号ごとにダウンロードしてみてください。  白樺サロンの会
2014.10.28
石川玲子先生による「「英国モダニズム作家ヴァージニア・ウルフとキャサリン・マンスフィールドの描くパーティ」は文学的・社会学的な視点からの社交をめぐるお話でした。ご研究のヴァージニア・ウルフの思想に拠りながら、今日、見えにくくなった人の交わりをアカデミックな文学論を交えてお話しされました。深い人間観を伴うお話しで、志賀直哉秋期特別最終講座「高畑サロン、ふたたび」にふさわしい内容になりました。
2014.10.23
「相対論から解き明かす宇宙と生命」時間をテーマにする物理学的自然と生命のいとなみ。さながら名画を目の当たりにするようなお話でした。山口大学客員教授(時間学研究所)橋元淳一郎先生による第八回「高畑サロン、ふたたび」(白樺サロンの会)講座。…温度はマクロの世界に存在し、虹は生命の世界に存在する……。秋深まる古都、最先端の科学とそこに見る人間の生についてのお話は、そのまま芸術にさえ届くものでした。
2014.10.16
台風19号の接近で危ぶまれましたが、第七回「高畑サロン、ふたたび」、梁瀬先生による「続片輪車螺鈿蒔絵手箱の流転」が予定どおり行なわれました。この名宝の流転をめぐる長年のご追究は、歴史の真相に辿り着く道程の難しさを図らずも教えてくれています。
2014.10.01
「高畑サロン、ふたたび」第五回志賀直哉秋期特別講座は「志賀文学の技巧を探るー『剃刀』『城の崎にて』を中心にー」と題して生井知子先生にお話をいただきました。生井先生は白樺派、志賀直哉の文学について今日までご研究を積んで来られました。貴重なご研究の成果を発表していただき、さながら志賀直哉のペン先に触れるような講座になりました。
2014.09.28
平瀬礼太氏『〈肖像〉文化考』(春秋社)!堂々の書評「イメージに翻弄された近代日本」(日本経済新聞 SUNDAY NIKKEI 安藤礼二〈評〉平成26年9月28日付)「極めて人間的であり、すぐれて近代的な様相」が具体的にみごとに新たな視点に捉え出される。
2014.09.25
「高畑サロン、ふたたび」第四回講座は平瀬礼太先生の「《肖》《像》のはなし」。新刊『<肖像>文化考』(春秋社/2014年8月20日発行)の著者によるスライドを交えた貴重な「おはなし」。すでに東京新聞(9月21日付)、共同通信配信各紙に書評掲載。新刊『<肖像>文化考』、既刊につづいて今回も高い評価を得た気鋭の美術評論。ご一読を!
2014.09.19
第三回講座、呉谷充利「柳宗悦と志賀直哉ー日本のモダニズムー」(「高畑サロン、ふたたび」)が行なわれました(9月15日 月)。東洋の美の精神性において『暗夜行路』が完成。終章「大山の一夜」はその経験に他ならない。
2014.09.10
「高畑サロン、ふたたび」第二回講座、「夏目漱石『それから』ー代助のありようー』が志賀直哉旧において行なわれました。なお、本講座の吉川仁子先生は、平成26年4月23日、NHK6時過ぎの地方ニュース「ならナビ」と夜9時前の「なら845」ニュース番組の中で、『りずむ 第三号』掲載の池田小菊の未発表小説「ナハロフカ」についても解説。
2014.09.05
古都の秋の講座。 志賀直哉旧居「高畑サロン」へ散策の道 〜 学校法人奈良学園から
2014.09.03
「高畑サロン、ふたたび」平成26年度 志賀直哉旧居秋期講座(白樺サロンの会)がはじまりました。本年度第一回の講座は奈良女子大学名誉教授、弦巻克二先生による志賀直哉在住当時の高畑界隈をめぐる散策です。
2014.08.29
「《肖》《像》のはなし」(9月22日 2時〜3時30分 )は、 新刊『〈肖像〉文化考』(春秋社発行)著者、平瀬礼太氏による注目の講座!!
2014.08.07
「白樺サロンの会」の講座が志賀直哉旧居(学校法人奈良学園主催)において平成26年9月1日(月)から隔週ではじまります。8名の陣容です。
2014.05.27
『りずむ 第三号』掲載の池田小菊「ナハロフカ」が朝日新聞「文化」欄に「池田小菊 時代を読み解く感性(吉川仁子氏 記者発表)」の見出しで、大きく取り上げられました。(2014年5月26日付夕刊記事 近畿版)
2014.04.05
『りずむ第三号ー池田小菊未発表原稿「ナハロフカ(無能者」ー』(翻刻・解説/吉川仁子・弦巻克二)(白樺サロンの会)が刊行されました。
2013.10.25
宇宙の神秘--ギリシャ哲学から現代物理まで  橋元淳一郎   物理学は哲学と裏腹。古代ギリシア哲学から21世紀物理学までの道のりをこの見方から辿った興味尽きない人類の思想のドラマ!が語られる。
2013.10.18
傷痍軍人と美術  平瀬礼太 (*午後2時〜3時30分)  未踏の美術が拓かれてゆく。「再起の踊」(朝倉文夫)
2013.10.11
続片輪車手箱の流転  梁瀬 健 名品の顛末はまた隠れた人間のドラマとなって現われる。
2013.10.04
ノスタルジア ウィーン 中村一雄  
2013.09.27
あらたにご参加いただきました吉川仁子先生の講座 夏目漱石『行人』について―漱石と志賀の関わりにふれながら―
2013.09.20
夏目漱石と志賀直哉 呉谷充利  漱石の漢籍、直哉の美術とその文学表現、文体について。
2013.09.13
志賀直哉と禅 弦巻克二  「こんな良いお話をたったこれだけの人数(定員40名)で聴いていいのでしょうか」ご参加者の感想。
2013.03.30
りずむ 第二号 ー白樺サロンの会 五周年記念号ー 発行
2012.11.10
渋谷区旧常磐松志賀邸解体に伴う調査: 相愛大学 呉谷充利、奈良県立美術館 松川綾子、深谷聡。 1.書斎机(奈良高畑旧居一階志賀直哉使用)2.二月堂机(暗夜行路を完成執筆したものと思われる。上司海雲が志賀直哉に譲渡)3.クローバー型テーブル(当時の写真に写されている)4.陶器製傘立て(当時の高畑旧居写真に掲載)5.志賀直方に宛てた未投函の手紙(〈大正3年〉12月1日付 未公表)。(調査 平成24年11月10日)1.2.3.4については、学校法人奈良学園セミナーハウス「志賀直哉旧居」に寄贈。
2012.10.15
奈良と銅像 平瀬礼太 「銅像受難の時代」を免れた奈良の銅像、大台ヶ原の神武天皇像と高鴨神社(御所)の楠公像。
2012.10.08
幻の観音様とご対面   梁瀬 健  さながらミステリー・ハンターのごとき追求のドラマがつづく・・・。
2012.10.01
志賀邸、隣家中村義夫滞仏の記録「ノスタルジア」 中村一雄
2012.09.24
新たにご参加いただきました 橋元淳一郎先生の講座 「物理の時間、生命の時間」
2012.09.17
志賀直哉の文学 弦巻克二  『城の崎にて』『和解』『暗夜行路』が宗教的見方から読み解かれる。
2012.09.10
谷崎潤一郎と志賀直哉の観音像   呉谷 充利 ただの愛蔵品ではなかった。観音像は谷崎の小説のモデルとしてのみならず、さらに両作家の文学の根底に通じる。
2012.03.30
りずむ 創刊号: 奈良の数学者、岡潔の追憶〜「春雨やよもぎをのばす草の道」。
2012.03.30
『りずむ 創刊号』刊行 白樺サロンの会 平成24年3月30日発行
2011.09.02
平成23年9月、行方不明の谷崎・志賀の観音像(二階客間)の発見。
2011.08.22
高畑と景観 中村一雄    景観は人の心持ちとつながる。
2011.08.08
奈良の近代美術と戦争の時代-「懸崖ニ倚ル木炭増産」をめぐって- 平瀬礼太     戦時下の物資難・交通難のとき、庄田鶴友画伯により、実際に描かれた十津川村の炭焼き風景。なんともいえず、こころに深く響く作品。 
2011.08.01
片輪車手箱の流転  梁瀬 健 元々は法隆寺の寺宝だったという”国宝中の国宝”「手箱」の辿った道。
2011.07.25
志賀直哉の文学 弦巻克二    「直哉が直感した"自然と自分との一体感"は、禅宗に培われたものではなかったか」
2011.07.18
訪ねて来た小林秀雄 -モオツァルト- 呉谷充利   道頓堀で、突然鳴ったト短調シンフォニィの曲から小林秀雄は「モオツァルト」を書く。志賀直哉を尋ねた頃。
2010.08.23
志賀さんに会った頃  中村一雄 因に年譜をたどれば、志賀直哉が奈良を引き揚げるのは昭和13年4月、このとき画伯、3歳である。
2010.08.09
奈良高畑と美術家  平瀬礼太 「なぜ高畑周辺に美術家が集結したのか」「森々(もりもり)とした自然があって、風情の深さも他に類がない」
2010.08.02
志賀直哉をめぐる人々  弦巻克二     直哉と鏡花の出会いの定説(大正2年のロダン展)を覆す発見。『木下利玄の日記』から明治45年のロダン展と判明。貴重な研究成果の発表。
2010.07.26
志賀直哉と谷崎潤一郎の観音像   梁瀬 健    志賀直哉と谷崎潤一郎の一体の仏像を巡るエピソード。その後行方知れずになっている観音像追跡調査のはなし。
2010.07.19
志賀直哉旧居講座がはじまる。 「志賀直哉と奈良―奈良に流れる時間」 呉谷充利 「志賀の作品は古都・奈良の歳時記のような、現代が失った時間の流れと、古美術に刻まれる生命の鼓動とも言える"リズム"から生まれている」
2010.01.25
直哉の時代に戻された志賀直哉旧居の二階客間から眺める若草山の山焼き。春を告げる古都奈良の風物詩。
2009.05.02
平成21年5月、学校法人奈良学園により志賀直哉旧居復元工事が完成し、全面公開。
2009.05.02
志賀直哉旧居復元工事 竣工式参列。
2008.10.04
平成20年10月4日、「志賀直哉旧居保存運動三十周年メモリアル」開催 於: 奈良女子大学記念館講堂
2007.11.24
平成19年、白樺サロンの会の活動はじまる。講演、呉谷充利「エキゾチシズムの時代ー奈良高畑の遺産」(於: 中村家主屋 旧足立源一郎邸)
『りずむ 第三号ー池田小菊「ナハロフカ」(無能者)』読者からの手紙です。

「りずむ 第3号」お送り頂き有難うございました。「ナハロフカ」ゆっくり読んでおります。私が在満時代に得た情報と重ね合わせ感無量でした。
ハルピンはエキゾチックな街として言われてました。白系ロシヤ人が何万人とおり、ロシヤ寺院、デパート等があり住みたい街でした。(中略)思いつくまま、なつかしさのあまり書きましたが有難うございました。私も今年で84歳になります。中国では老人は数え年で言いますので「我此 虚歳 八十五歳 我属?馬」私は数え年で85才、私は馬年ですと言います。昨日も満州の学校の会が大阪でありましたが、段々減ってきてさびしい限りです。・・・もう一度満州へ行きたいですが、体が無理の様です。(後略)(奈良市在住 平成26年5月2日)



『りずむ』の由来

 

志賀直哉はつぎのことを述べている。

 
(すぐ)れた人間の仕事—する事、いう事、書く事、何でもいいが、それに触れるのは実に愉快なものだ。自分にも同じものが何処かにある、それを眼覚まされる。精神がひきしまる。こうしてはいられないと思う。・・・

いい言葉でも、いい絵でも、いい小説でも本当にいいものは必ずそういう作用を人に起す。一体何が響いて来るのだろう。

芸術上で内容とか形式とかいう事がよく論ぜられるが、その響いて来るものはそんな悠長なものではない。そんなものを超絶したものだ。自分はリズムだと思う。

このリズムが弱いものはいくら〈うまく〉出来ていても、いくら偉らそうな内容を持ったものでも、本当のものでないから下らない。小説など読後の感じではっきり分る。作者の仕事をしている時の精神のリズムの強弱—問題はそれだけだ。…(後略)。」(「リズム」昭和六年)


   
前三号の『白樺サロン』を改称した『りずむ』の名は、志賀直哉が奈良高畑の旧居で書いたこの一文から取り出したものである。本誌の創刊はこの志賀直哉の思索に拠りながらよりひろいテーマ性をもって新たな出発をはかっている。


                                                                                                                                        白樺サロンの会 
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